旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
「落ち着かれましたか」
「うん。どうもありがと」
彼はニコリと口元に弧を描くと自分も紅茶を一口飲む。いつもと変わらない穏やかな姿に、私はやっぱり安堵を覚えるけれど。
「真奈美さま」
「何?」
「真奈美さまのお気持ちが知れて安心しました。これで心置きなく颯さまのもとにお返しすることが出来ます」
ゆったりと微笑んで言った藤波の言葉に、私は驚いて瞬きを繰り返してしまった。
「へ? どういうこと?」
思わず訪ねたとき、ピンポーンとチャイムの音が部屋に鳴り響いた。
「思ったより早く嗅ぎつけてきましたね。さすがは結城、といったところでしょうか」
さらに驚くことを言うと藤波はソファーから立ち上がり、インターフォンの確認どころかエントランスのロック解除もせずに玄関へと向かって行ってしまった。