旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~

私はリビングの陰から顔を出し、こっそりと玄関を窺う。

すると、藤波が開いた扉の向こうにいた人物の姿に、私は大きく目を瞠った。

「強制的に踏み込まれたくなかったら、十秒以内に真奈美をここへ出せ」

――は、颯!?

玄関の向こうにはヒシヒシとした怒りを滲ませた颯が腕組みをして立っていて、その後ろにはズラリと結城のSPが控えているのが見える。

まだここについて三十分もたっていない。なのにあっさりと居場所を突き止められてしまった私は予想外すぎて、呆然と立ち尽くしてしまった。

しかもここはかなりしっかりしたセキュリティがあったはずなのに。結城の力を持ってすれば、それすらも意に介さないというのだろうかと軽く戦慄さえ覚えた。

けれど、藤波はまったく動じる様子も見せずに軽く一礼をしてから颯に向き合う。

「そんなに焦らなくても、ちゃんとお返し致しますよ。けれど宜しかったら少しお話されていかれませんか? 颯さまもわたしに聞きたいことがおありでしょうし」

淡々と言葉を返した藤波に颯は殴りかかりそうなほど顔を険しくさせたけれど、廊下から私が覗いてるのを見つけると、一瞬驚いたあと複雑そうな表情を浮かべた。

「真奈美さまのじゃじゃ馬な性格上、僭越ながら、このままお返ししてもまた逃亡を繰り返されるだけかと。それにせっかくの機会です、颯さまの一番知りたいことをお教え致しますよ」

――颯の一番知りたいこと? 何それ?

藤波は何やら不思議なことを言っていたけど、颯は眉間にしわを寄せて彼を一睨みすると、片手をあげてSPを下がらせひとりで部屋の中へと入ってきた。
 
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