旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
……なんなんだろう、この状況は。
さっき私が散々泣きじゃくったリビングに、今は私と藤波、そして颯の三人が向き合って座っている。逃亡を企てた者、それを助けた者、そして追ってきた者。当然部屋に漂う緊張感は半端ない。
藤波は改めて紅茶を淹れなおしテーブルにカップを置いたけれど、颯は手もつけないどころかずっと藤波を睨んだままだ。
私も私でさっきからずっと手に汗を掻いている。っていうか、藤波と颯の考えてることが全然分かんない。
逃亡の手助けをしてくれたはずなのに、藤波はどうして颯を部屋にあげたんだろうか。颯も強引に私を連れ戻さず、なんで藤波の話を聞こうと思ったんだろうか。
睨むのをやめない颯と、どことなく飄々とした雰囲気の藤波。両者の顔をこっそり盗み見ながら、私はひとり密かに生唾を呑みこむ。
けれど、堪え性のない私はついに重苦しい沈黙にたえきれず、先走って口火をきってしまった。
「よ、よくここが分かったね」
我ながら阿呆な発言だとちょっと後悔したときには遅かった。
「……お前、ふざけてるのか? 国道をウエディングドレス姿のままバイクで疾走するような派手なことをして、わざと俺をここへおびき寄せたんだろうが」
「へ?」