旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
ここまできてまだ観念しない私に、颯の怒りがふつふつと沸いてくるのが伝わる。
ずっと藤波を睨んでいた颯は視線をこちらに向けると、今度は私をキツく見据えてきた。
「馬鹿が。言っただろう、これは絶対に避けられない結婚だ。お前が泣こうがわめこうが関係ない。アサギの会社もお前の家族もどうなってもいいなら構わないけどな」
まるで脅迫だ。こんな言い方卑怯だ。いくら政略結婚だからってあまりにも横柄な颯に怒りを通り越し落胆する。
……このままじゃ私、本当に颯を嫌いになっちゃいそう。
そう思って唇を噛みしめたときだった。
「なるほど。たまたま結城の子息に生まれついただけで己の力と勘違いし権力を振りかざす……。なかなかの暴君でいらっしゃる」
顎に手を当て冷ややかな笑みを浮かべた藤城が、まるで小馬鹿にするような相槌を打って呟いた。
それを聞いた颯が表情を険しくし、バンッとテーブルを叩いて立ち上がる。
「俺の妻をさらおうとした男が、えらそうな口を叩くな!!」
まるで殴り掛からん勢いの颯に、私は自分の怒りも忘れ慌ててソファから立ち上がり彼の腕を掴んで宥める。
「ちょ、落ち着いてよ颯!」
そして、そのままの体勢で藤波を振り返って言った。