旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~

「藤波! 確かに颯は暴君で横暴でどーっしょうもない俺様だけど! でも『たまたま生まれついた』から威張ってる訳じゃないから! 結城の次期総会長としては頑張ってるし有能だから、そーいう無能ボンボンみたいな言い方しないで!」

だからといって威張り散らして良い訳じゃないけれど。でも颯のこと何も知らないのに腐されるのは黙ってられないので、私は藤波に向かってがっつりと否定した。

すると。

「……ん?」

さっきまで殺人鬼みたいな形相をしていた颯が、表情を一変させていた。なんだか驚いてるような戸惑ってるような顔をして、目をパチパチさせながら私を見てる。

「……なんか私、ズレたこと言った?」

無自覚にまた阿呆なことを言ってしまっただろうかと焦り、私は掴んでいた手を離すと薄ら笑いを浮かべて一歩後ずさる。

すると颯は「……別に」とこちらから顔を背けて、フーッと息を吐き出しながらソファーに座りなおした。

何この反応? 意味が分からずにキョロキョロすれば、藤波まで口元に手を当てて何故だか可笑しそうに笑っている。

けれどそれに気付いた颯は再び険しい表情を浮かべると、「おい」と藤波に呼びかけた。

「もう一度聞く。どういうつもりで真奈美を勝手に連れ出した」
 
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