旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
なんで同じこと二回も聞いてるんだろう? 颯はまるで自分の探してる答えを一生懸命手繰り寄せるみたいに、藤波に同じ質問をぶつけた。
そして藤波も呆れたりせずに同じ答えを繰り返す。まるで颯の欲しがっている答えを知っているみたいに薄く微笑んで。
「私は真奈美さまの執事で教育係ですから。真奈美さまが望まれたことに従っただけです」
「……これが真奈美の望んだことか」
「そうです。お嬢さまは昔から鬱憤がたまったときは思い切り晴らさせてあげないといけない性分ですから。思いっきりワガママを言ったり、大泣きしたり、好きなことをしたり。子供の頃からそれを受けとめるのはわたくしの仕事でした」
藤波の話に、今度は私が目をパチクリさせる。もしかして彼は……元々私を逃がす気なんかなかったのだろうか。
なのに颯はその答えに納得していないようで、調子を変えないままさらに尋ねた。
「本当にそれだけだと、どうやって証明出来る?」
その問いに、藤波は初めて表情を崩した。フッと呆れを含んだ笑いを零し、彼らしくない苦笑を浮かべる。
「ここにこうして留まっていることが、何よりの証拠です。もし真奈美さまがわたくしに対して違うことを望まれたなら、わたくしはこんな所でのほほんとしていませんよ。市役所に寄ってから空港に直行して、今頃は海の向こうへ逃亡中です」