旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
下品に紅茶を飲んだ私をひと睨みしてから、藤波は再び胡散臭い笑顔を正面に向ける。
「簡単にお教えすることは出来ませんが、答えに導いてさしあげることは出来ます」
そう言って立ち上がると彼は部屋の奥にある扉から別室に行き、すぐさま手に何かを持って戻ってきた。そして、颯の正面に立ちそれをひとつずつ差し出していく。
「あ! それ、私のスマホじゃん!」
ご丁寧にシルクのシートに包んで恭しく差し出したのは、ホテルに監禁された初日に取り上げられたはずの私のスマートフォンだった。
藤波の説明によると、必要ないからと浅葱の邸へ送られてきたらしい。
怪訝そうな顔をしている颯にそれを渡すと、藤波は次に一着のテニスウェアとICカードを手にした。それにも見覚えのある私は驚いて目を丸くする。
「真奈美さまが週に二回使われていたテニスクラブの会員カードと愛用のウェアです」
そう。藤波の説明通り。監禁生活が始まる前、私は週に少なくとも二度はゆーちゃんや仲良しの友達とテニスをして思いっきり身体を動かしていたのだ。
……楽しかったなあ。思う存分遊んで、終わった後はみんなでランチしながらおしゃべりして。
けど、そんなものを渡された颯は当然不思議そうに眉を顰めている。私も藤波が何を考えてそんなものを渡しているのか分からない。
けれど彼は淡々としたまま、最後に手にしていたものを差し出した。それは。