旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
「藤波……」
さっきあんなに泣いたのに、私はまた泣きそうになってしまった。だって、なんなのこの感動的な演出。まるで結婚式の花嫁のお父さんみたいじゃん。
藤波はすごい。颯の元から逃げたがっていた私が本当は何を望んでいたのか、全部分かっていてここまで付き合ってくれたんだ。
もっと自由に生きたい。元気に生きたい。それを、夫となる颯に分かって欲しかっただけなんだ。私は。
思わずウルウルした瞳でふたりを見つめると、颯は唇を噛みしめたまま何かを考えている様子だった。
そしてゆっくりと頭を上げた藤波は、目元をわずかに和らげて言葉を続ける。
「――それが、颯さまの知りたい答えに辿り着く、唯一の方法です」
……結局、颯の知りたいことってなんなんだろう。やっぱり私にはさっぱり分からない話だけど。
「……は、颯!」
藤波が私の自由を取り戻してくれようと、心を砕いてまっすぐ頭を下げてくれたのだ。張本人である私がボケッとしている訳にはいかない。
「今日は勝手に逃げ出したりしてゴメン。颯やみんなに迷惑かけたことは反省してる。でも……逃げずにはいられないほど今の生活が苦しかったって、分かって? 誰とも面会も連絡も出来ずに閉じ込められたまま、颯ともろくに喋らない毎日なんて耐えられない。これからはもっといいお嫁さんになるように努力もするからさ、だから……私に自由を返して。それで、仲直りしよう。ね?」
素直に思いの丈をぶっちゃけると、私は颯に向かって深々と頭を下げた。「本当にごめん」と謝罪を繰り返して。