旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
 
客席には、結城のご両親と充さんと遼くん、それにうちのおじいとお父さんと、藤波もいる。

藤波は私にとって家族も同然なので式には呼びたいとずっと前から思っていたのだけど、颯はそれを以外にもあっさり承諾してくれた。てっきり『家族じゃない男を呼ぶな』って反対されるかと思ったのに。

まあ、想いが通じ合ってからは颯もだいぶ丸くなったし。私の普段の行いが信頼を育んだってことかな。

それと後は――藤波が颯にくれたあの手帳。私は中身を見せてもらえないんだけど、颯はあれから結構読み込んでいるみたいだ。

何が書いてあるのか一度訪ねたときには、颯は『お前の飼育法っつーか……攻略法?』なんて言ってた。それからしみじみと『役に立つ』と独り言ちていたので、きっと彼なりに藤波に敬意を払ってるのかも知れない。

まあなんにせよ、颯が藤波を認めてくれてよかった。

そうそう。颯が丸くなったといえば、結城家の長男次男の関係は以前より多少良くなったみたいだ。

どうしてか颯は私が充さんを好きなんだと勝手に誤解していたことがあったけど、私の初恋が颯だということを知ってからは、充さんに対する態度が随分と柔らかくなった気がする。

つまり、兄弟の関係を悪化させていたのは、颯のこじらせたコンプレックスと勝手な嫉妬だった訳だ。

それが解消された今現在では、多忙な中結婚式に駆けつけてくれた充さんに、「ありがとう」が言えるくらいには颯も素直になった。

もっとも。ずっと反目してきた兄に急に素直になるのは照れくさいらしく、颯の「ありがとう」は随分とぶっきらぼうで恥ずかしそうだったけれど。

でも私は颯のそんな姿がなんだかすごく嬉しくて、密かに惚れ直したことは秘密だ。
 
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