旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
「お嬢様。重々承知だとは思いますが、今日ばかりは何があっても品格を損なうような真似だけはしませんようお願いしますよ」
「分かってる。あーコンビニ行きたいなあ」
幾何学模様のクロスが掛けられたテーブルに頬杖をついて嘆いたら、藤波が眉間に皺を寄せたけど、私はそれを見なかったことにして自分の鞄を片手で漁った。
すると、鞄の奥に入れていたスマホがちょうど電話の着信を報せるライトが点滅していたことに気付き、あわててそれを取り出す。
「もしもし、ゆーちゃん?」
通話ボタンをタッチして耳に当てれば、わが親友・片桐由宇(かたぎり ゆう)の『もしもしー、まな?』と明るい声が聞こえてくるではないか。
やった。ちょっとリラックスしたいと思ってたんだよね。
「ちょっと聞いてよ、ゆーちゃ~ん。私これからさあ」
私は待ち時間の間すこしだけ友人とのお喋りを楽しもうと思ったのだけど。
「お嬢様っ!」
口うるさい藤波が怒り出したので、私は電話を耳に当てたまま部屋から脱走することに決めた。