旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~

「はぁああ!? い、今なんて言った!?」

耳を疑い思わずソファーから勢いよく立ち上がってしまう。だって、監禁だけでも最悪なのに、『一緒に暮らす』なんて絶対に嫌だ!

けれど颯は青くなっている私をひと睨みすると、わざと呆れた溜息を吐き出して言った。

「一緒に暮してやるって言ったんだ。お前は俺のために朝の紅茶を淹れることから一日を始め、仕事に行く俺を恭しく見送り、疲れて帰ってきた俺を労い、夜は早く跡継ぎが出来るように最大限努めるんだ。結婚後の予行練習だと思って真面目に励め。それが結城颯の妻になる者の義務で、最低限の心得……って、コラ待て!!」

彼の説明が終わる前に私はソファからダッシュで逃げ出し、一目散にドアへ向かって部屋からの脱出を試みた。

冗談じゃない。まだ正式に結婚もしてないうちからそんな奴隷みたいな生活、絶対に願い下げだ。そもそも自分で『この結城颯に尽くせ』って、どんだけ偉そうなのさ。こんな横暴で尊大な俺様に尽くすなんて、絶対に嫌だ!

しかし案の定、部屋の扉には鍵が掛かっており開く訳がない。押そうが引こうが体当たりしようがどの扉も開かず、無駄な抵抗をする私に颯が後ろから「言っとくけどドアは全部俺の虹彩認証でしか開かないからな」などと、絶望的な声をかけた。
 
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