旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~

「外出は許可出来ない。その代わり欲しい物や必要な物があったら言え。なんでも用意してやる」

冷静な口調でそれだけ言い残すと、颯は広い部屋をさっさと歩いてひとりで出て行ってしまった。

その後ろ姿を見て、少しでも『言い過ぎたかな?』なんて思ってしまった自分に腹が立つ。下手に出てやったのに監禁の手を緩めようともしない悪魔に罪悪感なんか持つんじゃなかった。

馬鹿みたいに広い部屋にひとり残されてしまった私は「あーもー最悪~!」と極大の嘆きの溜息を吐きながら、キングサイズのベッドへと大の字で倒れこむ。

しなやかなスプリングのマットレスとアイダーダウンの布団が勢いよく寝転んだ身体を柔らかく受け留めてくれたけれど、憂鬱に荒ぶった心までは受け留めてくれなかった。



『颯に従順に尽くす練習』のためだけに捕らわれた生活は、逆を返せば彼がいない間は何もすることがない生活でもある。

しかも監禁、外部との交流は遮断と来ている。元々活動的な性格をしている私にとって、こんな暮らしは拷問だ。『退屈が怖い』と言ったマリー・アントワネットの気持ちがよく分かる。

ここへ連れて来られてまだ半日も経たないというのに、私は退屈のあまり精神的に疲労困憊し、この際颯でもいいから喋り相手が欲しくて欲しくてたまらない状態になっていた。
 
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