旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~

けれどまあ、藤波の言う事も分からないわけではない。

近年売り上げが落ちているとはいえ、我が家は代々名を馳せた商人の名家だ。つまり私はいわゆる『お嬢様』ってやつに分類されると思う。

そんなお嬢様がTシャツにショートパンツで健康的な手足を惜しげもなく出し、履き古したスニーカーに、前髪をちょんまげ状態のボンパにしたくつろぎ度満点のスタイルで出掛けようと云うのだから、藤波も青くなるというものだ。

「いいじゃない、行くのは庶民の憩いの場コンビニなんだから。気取ったドレスで行く方が浮いちゃうでしょ」

「それにしたって限度があります! しかも成人を超えた婦人が人前に出るのにスッピンだなどと……亡くなられた奥様が嘆かれますよ!」

「失礼ね藤波。私のスッピンは見るに耐えないとでも言いたいの?」

「そういう問題じゃありません! そもそもコンビニなど何故行く必要があるのですか!? 必要なものがあれば私どもが揃えるとあれほど……」

「気分転換がしたいの! それにあんた何度言ってもラムネグミと生ラムネ間違えて買って来るし! ああ、もういいや。とにかく行ってきまーす」

「お嬢様!!」

今年で四十七歳になる藤波の足を撒くことなど、まだまだ若人の私には容易い。

長い通路をダッシュをすれば、私はあっと言う間に彼の追走から逃れる事ができた。

 
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