旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
二十二時というもはや夜食に近い時間帯だけど、やっぱり誰かと一緒に摂る食事は美味しい。
用意された食事をペロリと平らげてしまった私を見て、颯は「毎日ちゃんとそうやって食え。身体でも壊されたら困るからな」と、満足そうな笑みを浮かべた。言い方は相変わらず偉そうだけど、一応は心配してくれてるのだなというのは伝わる。
食事中の会話の際に思ったけれど、どうやら颯は私が反抗さえしなければわりと優しいかも知れない。
常に上から目線で私のことを常時把握しているストーカー気質なのは腹が立つけれど、お土産買ってきてくれたり、食事を一緒に摂ってくれたり、悪くないところもそこそこある。
ちょっとだけ考えを改めながら向かいの席に目をやり、食後の紅茶を飲んでいると。
「……お前がどうしてもって言うなら、毎日一緒に晩飯を摂ってやってもいいぞ。そのかわり遅くなっても文句言うなよ」
さらに追い討ちをかけるように優しさを発揮してくるから、私は動揺して目を泳がせてしまう。
「い、いいよ。颯は仕事があるんだからちゃんと食べてきなよ。会食とか付き合いだってあるでしょ」
「遠慮するな。何を優先させるかは俺が決める。お前はよけいな心配せずに素直に夫に甘えてればいいんだ」
……あれ、私なんか変だぞ。わりと真面目に言った颯の台詞を聞いて、なんだか気持ちがソワソワしてきてしまった。
まっすぐこちらを見据える颯の顔が、なんだか見られない。