旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~

涼やかな瞳を伏せて紅茶を静かに嗜む綺麗な顔。第三ボタンまであけた襟元から覗く喉仏のライン、優雅な所作でカップを持つ長い指。

そういえば私、この人に一目惚れしたんだっけと甘い記憶が甦る。

顔合わせ以来ずっと喧嘩ばっかりしてたから忘れてしまっていたけど、颯はやっぱりカッコいい。ルックスはもちろんだけど、漂う気品が他の人間とは一線を画している。彼の本性を知らなかった頃の私が惚れるのも無理はない。

そんな目で颯を見てしまったら胸のソワソワはドキドキに変わってきてしまって、私はますます動揺してしまう。

いや待て、コイツは俺様でストーカーな颯だぞ。ときめいてどうする。いやでも、わりと優しいとこあるし、それにやっぱイケメンはイケメンだし。

頭の中でグルグルと思考を逡巡させていると、空になったカップをソーサーに置いた颯が話しかけてきた。

「風呂は? もう済ませたのか?」

「え、あ、うん。とっくに。暇だったから三回も入っちゃった」

いきなり声をかけられて焦ってしまったけれど、ニコリと得意のスマイルを浮かべて何事もないように見せかける。ところが。

「感心だな。俺に抱かれるためによーく磨いてたってことか」

突拍子もない言葉を返され、私は口に含みかけた紅茶をあやうく噴出してしまうところだった。
 
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