旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
「つまんないことで拗ねるなよ。もうこの話は終了な」
ふくれっ面をしている私に向かって、まるで呆れたように溜息を吐いた颯を見て、堪忍袋の緒が切れた。
「そうね。元々颯は私と結婚するはずじゃなかったんだもんね。女遊びが出来なくなっちゃってご愁傷様ですこと。ああ、でも別にかまわないのよ? 婚約しようが結婚しようが女遊び続けたって。そのかわり私には指一本触れさせないけど」
「はぁ!? お前なに言ってんだよ?」
椅子から立ち上がりあからさまに距離をとった私を見て、颯が顔をしかめた。
ああ腹が立つ、腹が立つ! さっき迂闊にときめいてしまったことが悔しくて、よけいに腹が立った。
政略結婚なんかに甘い夢をみたことなんて一度もない。けれどそれでも、こっちは将来の夫のために二十三年間も純潔を守ってきたというのに。
「なんか私ばっかり努力してきたみたいで馬鹿みたい。颯はその間、散々遊び呆けてたのにさ。……こんなことなら、やっぱり充さんと結婚したかった」
本来の婚約者であった結城家長男の充さんなら、私と同じく幼い頃から婚約中の心得ぐらい持っていただろう。
是が非でも童貞がいいという訳ではないけど、相手には身持ちぐらい硬くしていて欲しかったと願うのは、決してわがままではないと思う。
――ところが。