旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
「真奈美ちゃん、いらっしゃい。おひさしぶり」
「おばさま、ご無沙汰しております」
席を立ってまず出迎えてくれたのは結城律子婦人……颯のお母さまだ。
歳相応の美しさと淑やかさを兼ね備えた女性で、まさに淑女の鏡のような人だ。華美過ぎず地味過ぎず、それでいて凛とした美しさもあり女性らしい柔らかな雰囲気もある。
今日もドレープの入ったエバーグリーンのドレスを上品に着こなし、アップスタイルの髪には真珠をベースにしたヘアドレスを飾っている。決して派手ではないのに隙のない出で立ちには感心と羨望の溜息しか出ない。
そしてテーブルの奥に座っているのが、結城仁総会長……日本一のコンツェルンのトップに立つ男性で颯のお父さまだ。
「おじさま、本日はお招きありがとうございます。ご無沙汰致してすみません」
「久しぶりだね、真奈美ちゃん。いや、もう立派な淑女だ。真奈美さんと呼ぶべきかな」
タキシード姿のおじさまは柔らかに微笑んでそう述べる。オールバックにした髪に混じる白髪や目尻に刻まれた皺は、彼をとても優美で穏やかな壮年の紳士に見せた。
けれど、その出で立ち、しぐさ、そして柔らかな瞳の奥に秘められた凛々しさは並の人間とかけ離れたオーラを纏っている。威厳、品格、貫禄、何もかもが超一級だ。彼と接するこちらも、無意識に背筋が伸びた。