旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
そして二度目は今から八年前の新年パーティー。当時、病床に伏せっていた母の代理として父と一緒に出席したものだ。
かなり大きなパーティーだったのでおじさまもおばさまも忙しく、私も少し挨拶しただけだったけど。
そんな訳で顔合わせは初ではないものの、大人になってからしっかりと向き合ったのはこれが初めてとなる。
「そんなに前になるのね。それじゃあすっかり立派なレディになってるのも当然だわ」
おばさまはニコニコと微笑みながら関心した声をあげる。そして。
「じゃあ真奈美ちゃんが颯と会ったのも――」
さらに話を続けようとしたとき、部屋の扉がコンコンとノックされた。
「正さまのご到着です」
執事の案内で部屋に入ってきたのは、例の海外勤務から帰ってきた専務の叔父だ。
「やあやあ、ただいま戻りましたよ。おお、颯。久しぶりだな。こちらの綺麗なお嬢さんが婚約者のご令嬢か」
どうやら叔父さまは大らかで明るい性格のようで、朗らかに笑いながら部屋へと進み入ってきた。
「正叔父さん、お久しぶり。海外出張お疲れさまでした。紹介します、婚約者の真奈美です」
「はじめまして、浅葱真奈美です」
颯に紹介されながら、私はさっきおばさまが言いかけた話が少し気になっていた。
――そういえば、一度目の顔合わせのときって確か両家全員揃っていた気がするけど……颯っていたっけ?
けれどそんな些細な疑問は、この後続々とやって来た結城の親類たちと挨拶を交わしているうちに、すっかりと忘れてしまった。