旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
――本日の出席者は、主催者である結城仁夫妻と次男の颯。それから結城コンツェルン専務でおじさまの三番目の弟にあたる正叔父さま。彼の息子夫婦。さらに結城コンツェルン副社長でおじさまの二番目の弟にあたる修叔父夫婦。そして、おじさまから見て叔母にあたる結城コンツェルン監査役を勤める智子婦人だ。
身内だけとはいえ、結城の取締役がズラリである。なかなかの緊張感を強いられる。
けれど……私はこの席に充さんがいないことに、密かな安堵を抱いていた。
「全員集合とはいかず申し訳ないな。けれど、これでもよく揃った方なんだよ。うちは世界中のあちこちにみんな飛んでるからな」
おじさまが眉尻を下げてそう言ったのは、充さんと結城本家の末弟、つまり颯の弟・遼(りょう)くんのことだ。
なんでも充さんは新しい事業に着手中で、今は日本の裏側ブラジルにいるのだとか。さすがにおいそれと帰ってくるのは難しそうだと思いながらも……次期総会長の権利を健康上の理由で辞退したわりには随分活動的だなとも不思議に思う。
そして弟の遼くんは二十二歳で、現役の大学生だ。こちらも現在北米の大学に在学中で、おいそれとは帰ってこられないらしい。
正式な結婚式までには必ず全員揃わせて、改めて顔合わせの場を設けるとおじさまは言ってくれたけど。正直なところ、颯の前でどんな顔をして元婚約者である充さんに会えばいいうというのか、悩ましい。
別に付き合っていたわけでもなければ、政略結婚なのだから好き合っていたわけでもない。単に私も充さんも家の事情に振り回されてる立場なのだから、後ろめたく思うことは何ひとつないはずなんだけど――。