旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~

私は和やかな歓談をしながら食事を進める颯の横顔を、チラリと盗み見た。

別に、颯だって私相手にヤキモチなんか焼いたりしないだろうけどさ。でもやっぱ、彼にとって充さんはコンプレックスを刺激する存在だから。

愛情はなくとも自分の妻になる女が元婚約者、しかも快く思っていない実兄と接触する場面は、きっと颯にとってあまり見たくない光景なんじゃなかろうか。

そんなことをひとり悶々と考えながらも、私はいつものラグジュアリースマイルを崩さずに愛想よく歓談に加わる。

きっと次に結城一族と顔を合わせるときには、充さんも必ずいるだろう。そのときも颯はこんな風に和やかに過ごしていられるだろうか。

叔父や従兄と楽しそうに言葉を交わす颯を見て、そんな心配を勝手によぎらせる私だったけど。心の底ではちょっとだけ――私にヤキモチ焼いたりなんて……しないかな――なんて、浅はかな期待を抱いてしまった。反省。
 
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