旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
結城家おかかえのシェフが本気を出して作った料理は二十を超える品数のコースで、少量ずつと言えどかなりの満腹になってしまった。
食後はそれぞれワインや紅茶を嗜みながら、おばさまがヨーロッパのコンクールで受賞したことがあるというヴァイオリンの演奏をみんなで鑑賞する。
本当なら食後はテレビのバラエティでも観ながらネイルの手入れをしつつくつろぎたいところだけど、上流階級の嗜みとしては相応しくない。
おばさまの素敵な演奏が終わると、私は謙遜しながらもピアノを借りて腕前を披露した。
楽器が嗜めることも、上流階級の必須条件だ。こちとら幼少の頃から叩き込まれ、本意でないながらも大会で優勝するぐらいの腕前は持ち合わせている。
それにしてもヴァイオリンやピアノを弾いたり聴いたりしながら、お茶を飲んで歓談だなんて。時代錯誤だなあと思いつつも、この風格ある洋城には相応しい気がしてしまうのだから何とも言えない。
私はまたしても中世の姫君になったような気分で、結城の家紋が刻まれているベーゼンドルファーのグランドピアノを優雅に奏でた。