旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
ホテルの最上階に作られた、私と颯専用の大浴場。
ツヤツヤとした白大理石の大ぶりなバスタブにはいつだって快適な温度のお湯が張られ、バラの花弁が浮かべられている。
ジャグジーバスとサウナも設置されていて、メイドを呼べばエステやマッサージもしてくれる。まあ、個人所有のラグジュアリースパって感じだ。
そんな贅沢で無駄に広大なお風呂に浸かりながら、私はぼんやりと今日のことや颯のことを考えた。
今夜の会食は我ながらまあまあ上手く振舞えたのではなかろうか。粗相もなかったし、愛想も崩さなかった。婚約者である颯に恥をかかすことはなかったと思う。
「いや~しかし、すごいねえ日本一の財閥は。何もかもが超一流すぎる。あの一族、ラムネグミ食べたこと絶対ないんだろうな」
あらためてそんな感想を独りごちながら、ジャグジーの水流に心地好くたゆたっていたけれど。
「まあ、これで肩の荷も一個下りたし、颯ともすっかり仲直りできたし。今夜は安眠できそう~」
思いきり湯船で伸びをした私は、はたと気付く。
颯とすっかり仲直りした――と、いうことはだ。
「……あれ。もしかして今夜って……颯といっしょに寝るの?」