旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
そんな当たり前のことに気付いてしまった私は一気にパニくって、勢いよく湯船からザバッと立ち上がった。
「やだ! うそ! どうしよう!! いや別に嫌じゃないけど!!」
彼に抱かれるのは婚約者として当然の義務だし覚悟は当然持っていたけれど、今それを改めて考えるのは刺激が強すぎる。
だって、今日の私は相当颯に惚れている。ときめいている。ドキドキしている。
彼が王子さまモードを崩さずに私にキスしたり、あんなことやこんなことをしたらと思うと、緊張と興奮で鼻血が出そうだ。
「きゃー! やだ、恥ずかしい! 颯のバカ!」
ドキドキのあまり錯乱した私は広い風呂場でひとり意味不明なことを口走ったけれど、そんな場合じゃないとすぐに気を取り直すと、急いでさやかを呼びつけた。
――そうしてたっぷり時間をかけること2時間。
私はメイドたちの手を借りていつも以上に全身をピカピカに仕上げた。
「やだ、私キレイすぎ。美しすぎ。ちょっと気合入れすぎてる? やる気満々みたいでバカみたい?」
輝かんばかりの肌艶と私的黄金比を描くボディラインを鏡に映しながらも、ぬかりがないかマジマジとチェックし呟けば。
「今夜は真奈美さまにとって大切な夜ですから、完璧に整われるのは当然ですよ。きっと颯さまもお喜びになります」
汗だくで二時間もボディマッサージをしてくれたにも拘らず、さやかは疲れなど微塵も見せずに微笑んでそう言った。メイドの鏡だな、彼女は。