旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
そうして私は勝負下着の名に相応しい、気合の入ったランジェリーを身につける。やっぱ初夜は白だ。純白でレースを上品にあしらったシルクが適任だ。
その上にバスローブだけを羽織っていくべきか迷ったけれど、いくらなんでもそれはやる気丸出し過ぎなのでやめた。淑女には恥じらいというものが必要なのだ。代わりにファンシーピンクでヒラヒラ感たっぷりの、キュートでほんのりセクシーなネグリジェを身につける。
最後にふんわりと乾かした髪をサイドでゆるく結びうなじ見せの小技を盛り込めば、浅葱真奈美・初夜の臨戦態勢の完成だ。
完璧な装いでバスルームを出て、大きく深呼吸をしてから颯のいる部屋の扉をノックした。
「お、お待たせ。ゆっくり入ってたらちょっと時間かかっちゃった……てへっ」
気恥ずかしさのあまり馬鹿みたいな可愛い子ぶった笑いまで零してしまった。
けれど――部屋からは返事ひとつ返ってこない。
さすがに二時間は待たせ過ぎたか。呆れられていつもの不機嫌意地悪モードに入ってしまったのではないかと、ヒヤッとする。
ところが。
「颯……って、あれ?」
部屋の奥に進み入って、ソファーに座っている彼に声をかけようとすれば。
「……ね、寝てるの?」
なんと颯はソファーの肘掛にもたれかかったまま、スースーと静かな寝息を立てていた。