旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~

「えっ? な、何!?」

最初に異変に気付いたのは、私を中庭まで連れ出したショップオーナーだった。

周囲を商業ビルやショップビルなどに囲まれた閉塞的な中庭の死角、それは上空。

見上げた空からゆっくりと降りてくるのは二台のドローンだ。不気味なホバリング音をたてながら、じっくりと中庭の中央へ降りてくる。

「何? なんなの?」

ショップオーナーの声を聞いた他の従業員たちもそろって上空を見上げる。にわかに不穏な空気が漂い、中庭の異変に気付いた結城の護衛たちが店内からこちらを振り返ったとき。

「3……2……1……ゼロ!」

店内の大型振り子時計が14時を報せる鐘を高らかに鳴り響かせ、その瞬間、ドローンに積まれていた時限式の発煙筒が白い煙を盛大に噴き上げた。

「きゃああああ!!」

「なんだなんだ!?」

「中庭に異変発生! 颯さまと真奈美さまの身柄を確保しろ!」

ブシュウッという音をたてながら、発煙筒が中庭を真っ白な煙で埋め尽くしていく。

視界が完全に閉ざされた中庭はパニック状態だ。大勢の人間が叫んだり戸惑ったりする声を聞きながら、私はさっき目視で確認した『裏道へ繋がる隙間』へ一目散に走り出した。
 
< 94 / 155 >

この作品をシェア

pagetop