旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~

「真奈美さま! 真奈美さまはどこだ!?」

警備の者たちが叫ぶ声を背中に感じながら、私は緊張と高揚で胸を張り裂けそうに高鳴らせながら走った。たっぷりとしたドレスのレースの裾が邪魔で、両手で抱えても走りづらい。

それでもなんとか隙間の道を走り抜け裏通りへ出ると、空気の通りが良くなったせいか煙で覆われていた視界が一気に開ける。そして。

「真奈美さま、急いでください!」

目の前に豪快なエンジン音を響かせて停まったのは、一台のバイク。1300ccもあるBMWの大型クラスだ。

そしてフルフェイスのヘルメットにつなぎを着てエンジンを噴かせながら、こちらに向かってヘルメットを差し出す男こそ……この計画の最大にして唯一の協力者、藤波だ。

「しっかり掴まって!」

ヘルメットを被った私はウエディングドレスのままバイクに跨り、しっかり藤波の腰に腕を回す。すると彼は一瞬こちらを振り返って安全を確認してから、爆音をたててバイクを猛発進させた。

背後から一瞬、結城の警備たちが私を呼ぶ声が聞こえた気がしたけれど、それはすぐに遠くなってバイクのエンジン音に掻き消された。
 
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