旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
「へえ。一人暮らしの男の人の家に入ったのって初めてだけど、なんかイメージと違うな。まあ、藤波らしいっちゃらしいけど、普通はもっと散らかってるもんじゃないの?」
好奇心丸出しで私は部屋をウロウロと彷徨う。脱ぎっぱなしの靴下とかエッチな本の一冊でもあれば面白いんだけどな、と期待したけれど完璧執事の藤波がそんな隙を見せる訳はなかった。
「真奈美さま。部屋を物色するのも結構ですが、とりあえず着替えられては如何ですか」
呆れたように後ろから声をかけた藤波の手には、私が浅葱の家で着ていたワンピースとカーディガンが。それを見て自分がウエディングドレス姿のままだったと今更気が付いた。
「そういやそうだね。ありがと、着替えてくる」
着替えを受け取り、足払いの悪いドレスのレースを手で抱えながら、案内された隣の部屋へ向かう。
ドレスを脱ぐと、走り回ったりバイクに乗ったせいで裾が少し汚れてしまったのを見つけた。それを見てちょっと私の胸が罪悪感に痛む。
――そういえばこれ、どうやって返そう。
そんな悩みが浮かんで来ると、自分は本当に政略結婚から逃げ出したのだなあという実感がわいてきて、なんだか気持ちがソワソワとした。