旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~

覚悟はしてきたはずだった。この逃亡にどんな意味があるか、どんな結果をもたらすか。

けれど自分のかけた迷惑が改めて大切な人たちを落胆させるのだと思うと、やっぱり申し訳なさで胸が詰まる。ましてや逃亡の手引きをして私をかくまった藤波はもう浅葱の執事には戻れないだろう。

彼が私に仕えてくれた二十年近い月日はなんだったのだろうと思うと、やるせなくなって瞼が熱くなってしまった。

部屋に少しの沈黙が流れ、うつむいた私がうっかり鼻を啜りそうになったとき。藤波が向かいのソファーから立ち上がり、私の隣に跪いたのが見えた。

「以前も言いましたが、わたしは真奈美さまが立派に嫁がれるのと同じぐらい、あなたの幸せをずっと願っております。そのためには世界中を敵に回しても構わない覚悟も備えているつもりです」

「……藤波……」
 
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