【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち


菫は由香里さんの隣で食事をしていたけれど琉がいない。


食堂の中を見回すと植木さんの隣にラックが置かれ何も話せない琉と植木さんが会話をしていた。


「う…植木さん」


笑いを我慢しながら声をかけると


「結衣さん何も言わないでおくんなせぇ。見て見ぬふりでお願ぇしやす」


「わかりました。琉をお願いします」


「へい」


私はすましてその場を通り過ぎたけれど笑いを我慢すると身体が震える。


あの姿を見たら鬼の植木だと誰が言うだろうか。


もっとも私は鬼だと思った事が一度もない。


それでも


「結衣さん」


この一声で私は冷静さを取り戻すのも確かだ。


そして菫もまた


「菫ちゃん」



この一声で我儘を通そうと大泣きしていてもピタリと泣き止んだ。


それは、私達親子だけでなく由香里さんも佐和子さんも姿勢を正し響さんと隼も怖いというお方だ。



まさに藤堂組に植木ありだ。




恐らく琉は今餌付けか擦り込みをされている最中なのかもしれない。


あの会話にならない会話が実は何かの呪文なのかもしれない。


そんな事を思うと食事をするために持った箸が震えうまくおかずが口元まで届かない。




私の姿を見た由香里さんも何かを察したように


うふふふッと笑い声が聞こえ


菫からも


クククククッと笑い声が聞こえたので諦めて3人で大声で笑った。


その瞬間、


植木さんがこちらを向いたので笑い声がピタリと止まったのは言うまでもない。





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