ご主人さまの冷酷彼氏
「そういやあかねは、年下彼氏にあげるんだっけ?」
あかねの友人Aが発したセリフに、おれの感動は、一瞬で冷めきった。
と……
年下彼氏、だと?
ぞわっと背筋をあわだたせるおれの目に、満面の笑みでうなずくあかねの姿が、うつりこむ。
「うんっ!貴志くんに!!今から昼休みだし、持っていこうかなぁって。メール打っとこうかな」
……ま……
またタカシかよ……!!
おれはショックのあまり、尻尾をだらりと地面に垂らし、打ち震えた。
……なんでだよ、あかね。
あんなに冷たくされてんのに、なんでそんなけなげに尽くすんだよ。
タカシなんかほっとけよ。
あの野郎に渡すくらいなら、おれに食わせてくれればいいじゃんかよ……!!
ちくしょう。このままじゃ、あかねの手作りケーキが、冷酷男の胃袋におさまっちまう。
なんとか阻止できねえものか……
……そんなおれの願いが、届いたのだろうか。
「……あーかーねーちゃんっ!!」
家庭科室を出たあかねの前に、突然、ストッパーがあらわれた。