ご主人さまの冷酷彼氏


「ごめん、あの、ちょっといい……?」



ほおを赤く染めて、ちょいちょい、とタカシに向かって手招きするあかね。



……めまいがした。破壊的な可愛さだ。



自分の席に着こうとしていたタカシは、カバンだけ置くと、ゆっくりと、あかねの方に歩いていく。


タカシを見ながら、おれは、ははーんと目を細めていた。



……ははーん、そうか。ピンときたぞ。



これは、アレだ。


他の女には冷たいけど、彼女のあかねにだけデレデレになるっていう。


漫画でよくある、典型的なパターン……




「……なんか用?」




……って、テンション変わんねーのかよ。


聞こえてきた低いトーンのセリフに、おれは思わず、心のなかでツッコミをいれてしまった。



……なんか用?じゃねーよ。


彼女のあかねに対して、なんか用?はねえだろ。



おれがいら立つ一方、タカシを目の前にしたあかねは、さらにほおを赤くしている。


泳ぐ目線。小さな口が、緊張している様子で開かれる。


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