籠のなかの小鳥は
第二章/花挿す黒仙花





大和 弥生六日——

大内裏朝堂院 大極楽殿 朝政———



「———おそれながら、申し上げたく」
でっぷりと肥えた男が奏上する。


「長伴 逆殿、いかに」

「———赤の宮様におかれましては、ときに門から参内せず、朱雀を駆って天から内裏に下りられることがあるとの由」


「——いかにも」
一息おいて、赤の宮と呼ばれた蘇芳は返す。ぞんざいな口調だ。


万事に堅苦しいことを嫌う彼のこと、冠も袍も笏も身につけない狩衣姿だ。しかしその絹は、縦糸に紅、横糸に橙を使った織色で、翼を広げる朱雀を織りだしてある見事なものだ。
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