籠のなかの小鳥は
それともう一つ———

件の若い女房が、声をつまらせながら話しているのを耳にはさんだ。


「どこの心ある御方でございましょうか。
実家に、巻絹や疋絹など見事なものが授けられましてございます。
それに豪奢な、紅の色目の五重襲の装束が一揃い。唐衣に裳に引き腰(飾り紐)まで添えられまして。

これで妹の裳着の式もとり行なってやれます。
弟には、殿上童のお話まで。つても財力もなく、あきらめておりましたものが。

使いの者は決して名を名乗らず、この家にゆかりのある、さる方からとだけ———」



———如月の月の、春も盛りの頃のこと。
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