雨恋~芸能人の君に恋して~
押し寄せる報道陣をかき分けて、前へ進む。
人ごみの中、ひと際目を引く女の子の姿が、目に飛び込む。
ずば抜けて美人なわけじゃない。
芸能界に、彼女よりきれいな子は沢山いるだろう。
それでも強い光を纏って、俺を魅了してやまない。
誰よりも愛する人。
彼女の姿が見えた瞬間、駆け出していた。
会えない間、心がずっと求めていた。
「琉宇、会いたかった」
会えなかった時間を埋めるように、彼女の体を抱きしめる。
戸惑ったように、手をさ迷わせていた彼女は、そっと俺の背中に腕を回した。
「おかえりなさい。優紀君」
確かな温もりに、凍えていた心が温かくなる。
雨は止み、
長い、長い曇り空から、
澄み切った青空へと、世界が変わる。
「ただいま、琉宇」
君と2人なら、もう雨の日も怖くない。
『永遠に降る雨はないから』
君が教えてくれたから。
―END-