先生、俺を見て(仮)
まったく
憤慨しながら蛍は自身の担当スペースに戻る。
するとそこには既に颯の姿が。
(あ、今日は早い...)
まだ始まりのチャイムもなっていないのに。
「こんばんは!」
後ろから声をかけつつ席に着く。
ぺこっと頭を下げるだけだが以前に比べて棘はないのは好評価だ。
しっかし、相変わらずの無口
授業が始まるとひたすらに問題を解き続けるので無言なのはさして気にならないが、始まるまでのこの時間は流石にきつい。
それに、会話をしないから颯の情報が全くない。
これは個別指導の講師としてマズイ!!
生徒一人一人と親身になって向き合うのが売りだというのに!
(そろそろ動き出すか...!)
一か月待ったのだ。そろそろいいだろう。
そんな野心を胸に、蛍は身を乗り出した。
隣に座ってスマホをいじっていた颯がびくっと肩を揺らす。
戦闘モードの蛍に顔をひきつらせた。
「一週間ぶりですが元気ですか?」
「...はあ......」
「最近すごく寒くなったけど学校で風邪が流行ったりしてない?」
「...別に......」
「もうすぐ十二月!あと一か月で一年が終わりますがどうですか」
「...なんとも......」
「お休みの日は何を」
「...特には......」
「最近はまっているテレビは!」
「...特に見ないんで......」
「じゃあ好きな食べ物!!」
後半、鬼気迫るものがあったのだろう
「......何なんスか」
若干
いや、かなり引いていた。