恋の悪あがき〜甘い香りに誘われてⅡ
「ごちそうさまでした。森下さん」

Barを出て、森下さんと並んで歩く。

森下さんの駅は、私の降りる駅とは逆方向だった。

「まだ早い時間だし、ここで大丈夫」

森下さんは、家まで送ると言ってくれたけど、初めて会った人に家を知られるのは、抵抗があってお断りした。

「うん。じゃあ、また連絡するね」

お互いに手を振る。

ふふ…いい人だな。
これから知っていけば、好きになったりするのかな…

「……ないな」

たしかに、いい人なんだけど。

思わず独り言が口をついて出る。


『俺が相手になってやろうか』


わっ!なんで今ここで松田さんが出てくるのよ…


「嘘つき…そんな気なんてないくせに」

小さなつぶやきは、駅のざわめきに消された。
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