才川夫妻の恋愛事情






――あれから二時間ほど経過して、夜十時。オフィスには相変わらず人が残っていた。

私は松原さんから指示された屋外広告の振り出しを済ませ、褒めてもらったアイデアを提案書に落とし込んでいるところ。これは明日でいいと言われていた仕事だから、本当はもう、帰ろうと思えば帰れる状況だった。



「野波。遠慮してるならいいから、先に帰りなさい」

「違うんです。ちょっとノってきたのでやってしまいたくて」

「そう……? それなら、無理には帰さないけど」



そう言いながら松原さんはキーボードを叩き続け、提案書を大きく修正していた。気にかけてくれている松原さんにはとっても申し訳ないけども、私は本当に遠慮しているわけじゃない。
ただ今会社を出て一人になると、あまり考えないほうがいいことに思考を巡らせてしまいそうだった。少しくらい眠くても、仕事に頭を働かせているほうがいい。



だけどその集中力も、ひそひそと囁く声が聴こえてきたことで途切れた。



声の主はタバコ部屋の常連である先輩二人組だ。



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