才川夫妻の恋愛事情



才川さんが花村さんの両肩に手をかける。……まさか今、お酒の席でもないのにキスなんてしないですよねと、なぜかこっちがハラハラして。

二課全体の注目が集まるなか才川さんは、彼女の肩に額を乗せた。



「今のはすごい。読みすぎ。……あー、愛しいわ花村……」

「いとっ……! ……やだ、才川くんってばっ。当然じゃないですか♡ どれだけ付き合い長いと、思って……」

「愛してるよ」







……あれれ?





胸が痛いぞ?








こんなのただの、お家芸。鉄板ネタ。

人に見せるためのパフォーマンス。

そう思いながら目の端に、花村さんの体を抱きしめる才川さんを映してパソコンへと向き直る。



「……」

「他でやんなさい」



隣の席で松原さんが、二人に顔を向けずに言った。才川さんがおどけて「すみません、あまりに感動して」なんて言って、花村さんが「資料室行ってきます!」と叫んで営業フロアを出て行った。






私はなんだか、よくわからない感情で心臓が痛い。






その後しばらくして、才川さんがパソコンを持って資料室へと向かっていく気配を、私はただただ背中に感じていたのでした。



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