才川夫妻の恋愛事情



「……何してるんですか? こんなところで」



野波さんの声。

あ、ちょっと恥ずかしいところを見られてしまった……。

そう思った私は、照れから起きていることを言いだせずに狸寝入りを続けた。足元がはしたないことになっていないかと気になったけれど、自分の衣服でない重みを感じて、彼がスーツをかけてくれたことに気付く。



「誰かに様子見てこいって言われた?」



肩に触れた頬から才川くんの声が振動で伝わる。寝たフリをしていることが段々ムズ痒くなる。



「変な噂流れてるもんな。真面目に働いてるのに、心外だなぁ」

「……真面目に?」



真面目に? と思った心の声が野波さんの声とシンクロする。ついさっきおどけた声で〝本当にしちゃう? ここで〟なんて言っていた口がよくもまぁ……!

言ってやりたい口がむずむずとするのをごまかしながら自然な呼吸を心がける。すると繋がりはよく見えないけれど、才川くんは野波さんにこう返事した。





「あぁ……かわいいでしょ、俺の奥さん」








さすがに声が出そうになった。







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