才川夫妻の恋愛事情
ベッドの上で正座する私と、中央に背を向けて腰かけながら私のほうを向いた彼。しばらく無言で見つめあった。睨み合ったと言ってもいいかもしれない。これはあのたった一回の、夫婦喧嘩の延長戦かもしれないから。
しばらくして才川くんは私の目を見たまま言った。
「俺、不安にさせてる?」
私は首を横に振る。
「……じゃあ、寂しくさせてる?」
今度はどちらにも首を振らない。それは正直わからないのだ。ただ寂しい、とは少し違う気がして。だから正直にそう言った。
「……わからない」
「じゃあ何?」
「最近の才川くんは、変」
「変?」
「会社には結婚してることバラさないって言ったくせに、結婚を匂わせるようなこと言うし〝奥さん〟とか言うし」
「あぁ」
「子ども欲しくなさそうなのに酔ったフリしてあんな……あんなこと言うし」
「あんなこと?」
「……わかってるでしょ! 言わせようとするのやめてください」
〝ごめん〟なんて言いながら絶対に悪いと思ってない。余裕のある表情から、本当のことを教えてくれる気はないのだと悟る。そう思うと気が抜けたけど、こんなに本音をぶつける機会もそうない。私は話を続けた。