才川夫妻の恋愛事情





一見すると明らかに修羅場ですが、その日から私たち夫婦の関係が変わったのかと言えば、実はそんなこともありませんでした。

翌日の会社でも。



「花村さん、請求書」

「封筒に宛名書いて送る準備してありますよ」

「ありがとう助かる」



仕事で顔を合せるし、そもそも席が隣だし。避けるのにも限界がある。でもそれ以前に特に険悪にもなっていなかった。いつも通りです。

私たちのやり取りを見ていた駒田さんがいつものように声をかけていく。



「花村ほんと優秀だなー。本気で俺の補佐にこねぇ? ランチ代くらいなら毎日出してもいい」

「ほんとですか?」



ランチを毎日……! 言われて頭が勝手に試算する。まさか二人分のお弁当を作って持っていくわけにもいかないし、自分の分だけ用意するのも忍びない。夜残業でお互い遅い日もあるからランチは割り切って外食にしているが、それも平日五日間積み重なるとバカにならないのだ。

駒田さんの出した条件を〝なかなかオイシイ……〟とこっそり思っていることがバレたのか、才川くんが口をはさんだ。



「ダメですよ駒田さん、俺のです」

「……」



それならどうして離婚届? と心の中でつっこむ。



「相変わらず花村にはべったりだなぁ才川……」



私は駒田さんと才川くんのやりとりに困ったように笑う。

いつも通りの〝才川夫妻〟






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