才川夫妻の恋愛事情
「……結局、才川くんがなんで離婚届を持ってたのかはわからず終いだけど」
深夜一時を過ぎた私たちの家族会議もそろそろ幕引きだ。ほろ酔いの才川くんにあれこれ言ってみたけれど、彼は何も答えてくれる気はないらしい。
才川くんは解いたネクタイを向かいの自分のベッドに向かって放り投げた。
「それはみつきが〝別に教えてくれなくていい〟って言ったんだろ」
「うーん……。〝降参〟って書いてあったしその時はまぁいっかって思っちゃって。〝仕方ないなぁもうっ……!〟ってなんか、あの時の才川くんかわいくて……」
「お前な……」
「大好きだもんね私のこと」
「みつき。しつこい」
「才川くんが自惚れさせたんです」
「……」
才川くんは何か言い返そうとして言葉に詰まる。それはきっと、多少の心当たりがあるから。
「妙に家では距離取ろうとするし、子どもとか結婚指輪とか、なぜかそういう夫婦らしいことは避けようとするけどそれでも、愛されてるなぁって思うもん」
「なんで」
「私と話すとき空気が柔らかくなるでしょ」
言ってみたものの、これって伝わるのかなと不安になる。