才川夫妻の恋愛事情



「…………ふっ」




受け取った離婚届を見た瞬間、私は笑ってしまった。



思わずにやけてしまう口元を離婚届で隠した。こんな顔誰にも見られちゃいけない。今の私は、明らかに不審者だ。

後ろで、才川くんがバツの悪さをごまかすように頭を掻いている。それが振り返らなくてもわかって、余計に可笑しかった。



離婚届には。



届出人の署名欄、妻の欄には私の名前が書いてある。その横には〝才川〟の印。私があの休日にリビングのテーブルで捺したものだ。



夫の欄には、何も書かれていない。

ただ余白に、ボールペンで書いた一筆と〝才川〟の認印が押されていた。












〝ごめん、降参〟












四月一日。

私は賭けに勝って、また自惚れを深くしたのです。






*



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