才川夫妻の恋愛事情
「その動機なら、別に広告じゃなくてもいいんじゃない? 条件に当てはまりそうな業界は他にもあるだろうし。わざわざこんな残業が多い……言っちゃえばブラックな業界に行く理由ある?」
彼女は何と答えるだろう。膨れ上がる興味。
みつきはふいと視線をはずして、小首を傾げて考えだした。こういう質問をされたことが今までなかったんだろう。十数秒ほど。彼女はよく考えて、それから口を開いた。
「……まぁ、人生一度きりですし。死ぬほど働いてみるのも悪くないかなと思って」
「……なるほど」
それはなかなか、悪くない動機だと思った。
納得したところで人事担当者が「そろそろグループワークに移ります」と案内をかけた。まだ俺は自分の志望動機を話していなかったけれど、特に進んで話したくもないので〝ラッキー〟と思って正面に向き直る。
隣で彼女が小さな声で言った。
「……そう言うあなたは、結構ワクワクしてますね? この仕事に」
「え?」
言われてみつきのほうを振り向くと彼女はにこっと笑って、正面に視線を戻した。
「……」
見透かされた気分だった。