才川夫妻の恋愛事情
勢いで決めてしまった結婚がいつまでも心に引っかかっていた。
離れていってほしくなかったから「結婚しよう」と言ったのに、もし自分がそう言わなければ、みつきは今とはまったく違う人生を手に入れていたんだろうな、なんて。そんな当たり前の事実がすごく重くて。自分の勝手でみつきの未来を縛ったことに、漠然とした罪悪感があった。
いつか、彼女が真面目にあの日のことを思い返して、〝あんなのはやっぱりおかしかった〟〝あんなノリで結婚なんて決めちゃいけなかった〟と思うときがきたら?
自分の手の中に収めたい、と願う一方で。彼女が〝別れたい〟と言う時がきたら、その時は素直に手を離さなければいけないと思っていた。
必要ならいつでも差し出せるように離婚届を手元に置いて。買った結婚指輪を嵌めさせることもできずに。子どもをつくるなんてとんでもないと思いながら。
幼稚な感情で結んでしまったこの夫婦関係は、みつきを縛るあらゆることを俺に渋らせた。
自分のことながら、なんだか随分弱気だ。
三年目になったタイミングで、俺とみつきは同じ部になる。
内示を受けた日、夕飯を食べながらみつきは「私異動するみたい」と嬉しそうに話した。そういえば自分も異動があることを伝えていなかったなと思いながら、とりあえず彼女の話を聴く。
「へぇ。どこの部?」
「二課!」
「……」
え? と聴き返しそうになったのを寸前で我慢する。