才川夫妻の恋愛事情



「……営業二課?」

「そう。松原さんが〝人が足りない!〟って前言ってたから、松原さんの補佐かなぁ~なんて、勝手に思ってるんだけどね」

「ふーん……」



俺に今日出た内示も、営業二課への異動だった。けどなんとなくみつきには黙っておくことにする。言わなくてもどうせ四月一日になったらわかることだ。

ちょうどいいと思った。

この時、会社で他人のフリをする生活にみつきが慣れ始めていた。最初のようにベッドに潜り込んでくることもなくなって、いつも機嫌良さそうに働いて、家事をしてくれて。機嫌が良いのにこしたことはないんだろうけど単調な生活に飽きられたら終わりだ。

だからちょうどいい。今まで意図的に離れていた距離が強制的に縮まれば、それはまた少しの間緊張感をつくって彼女の刺激になるだろう。



それくらいに思っていたのだが。

四月一日になってみると、予想していた以上に俺たちの距離は近くなっていた。物理的に。



「……」



異動に伴う席替えで荷物を新しい席に運ぶと、隣の席にはまだ誰もいなくて、荷物もなくて。まさか、と思っていると当時向かいの席だった松原さんが俺に声をかけた。



「あぁ、そこ花村の席だから」

「……あ、そうなんですね」



隣かよ。



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