才川夫妻の恋愛事情
後に竹島からみつきとの関係を訊かれて答えた〝夢の中で三回は抱いた〟っていうのもあながち冗談じゃない。抱きたくないわけじゃないのにあえて二ヵ月も三ヵ月も我慢していれば、そりゃ夢にも出てくるよなって話で。みつきを飽きさせないための計画で、俺は自分にも勝手に我慢を強いてきた。それはなかなかしんどい我慢だった。
だけどそんな馬鹿なことにも、ちゃんと意味があったと思う。腕の中に捕まえた彼女に「なんで」としつこくドキドキする理由を尋ねると、堪えかねて怒ったように「好きだから以外ありますか!?」と叫んだ。
そうか。好きか。
それなら我慢してる甲斐があるよと、勿論言葉にはしないけど少し口が緩んでしまう。代りに「やっぱり楽しそうだ」と言ってやった。そして翌日、新たに思いついた作戦を実行した。
「花村さん、俺のタイプど真ん中なんだ」
白昼のオフィスでみつきの手を握り、周りによく聴こえるように言った。一帯がざわっとどよめくなかでみつきだけがぽかんとしている。
すごく馬鹿なことをしている自覚はあった。彼女を飽きさせないためだけにこんなことまでしてしまう自分が、少し怖い。けれどおくびにも出さずに笑って見せた。
「すみません。なるべく我慢しますけど口説くかも」
そう言ってから、ずっとぽかんとしているみつきの耳に〝ドキドキしてていいよ〟と囁く。ようやく意図を理解した彼女は頬を赤らめて困ったように口を変に結んだ。
ドキドキしてろ。
心の中で、本当はそう思っていた。