才川夫妻の恋愛事情
明らかにうろたえるその顔に絶対に言わせなければという気になって。風呂に入ろうとしていたのに気が変わった。戸惑う顔にすっと近付いていく。みつきは〝近い!〟と喚いたが、首元に両手を差し込んで耳元で囁くと静かになった。
「……今日楽しそう」
「っ……楽しくなんか」
会社での離れた距離に慣れきっていた彼女が、珍しく動揺してはしゃぐ。その様子は飽きとは程遠くて、安心する。
「なんでドキドキするんだ?」
「勘弁してっ……」
耳元で囁くとみつきは顔を赤くした。その表情の中にある妙な色っぽさに察しがついた。うなじまで真っ赤になった彼女は今きっと、前に抱き合ったときのことを思い出している。前に愛し合ったことを思い出して、唐突に生まれた劣情に苦しんでいる。
キッチンに立っている彼女を不意打ちで後ろから襲ったのはもう二ヵ月以上前のこと。
それも結婚以来の計画の一つだった。
・一つ、簡単には抱かないこと。
絶対に慣れさせたくなかった。
みつきに俺を意識させるのにセックスはとても重要な要素だった。頻度の低い営みに焦れて、彼女は俺がいないときにも俺のことを思い出す。もどかしそうに欲しがってくれる顔には興奮もしたし安心もした。だから抱いてほしそうにされても期待には応えず、いつもタイミングをずらして不意打ちで仕掛けていた。