才川夫妻の恋愛事情
駅近のマンション。
会社からはだいぶ離れた高層マンションの14階に住んでいる。
鞄から鍵を取り出して部屋のドアを開けると、ちょうど廊下のむこうの部屋に彼の姿を見つけ、目が合った。お風呂からあがったばかりらしい才川くんは、トレーナー姿で髪をタオルで拭きながら、ペットボトルの水を飲んでいる。
「みつき、お帰り」
さっきまでとはまったく違う顔で微笑んだ。
この二重人格! と私は心の中で毒づく。
「ただいま」
私はぶすっと返事をしながらアウターを脱ぎ、ハンガーにかける。
ガサガサと髪を拭きながら、また水を一口飲む彼。あぁ先にちゃんと髪を拭けばいいのに……。湿った髪の毛先からぽたりと滴が落ちて、グレーのカーペットに黒い染みをつくった。ついため息が出る。
まぁいいか、と思い直して、自分もシャワーを浴びようと浴室に足を向けた。
そのときだ。
「っ……どうしたの、才川くん」
突然後ろから抱きしめられた。