才川夫妻の恋愛事情



「……どうした?」

「別にどうも」

「どうもしないのにこんな甘える?」

「甘えますよ。いつも通りでしょう?」

「みつき……」

「……なぁに?」

「寂しい?」

「……」



この人、私に寂しいって言わせたいだけなんじゃないだろうか……。(※正解)

まさか寂しいって言わせるためだけに担当替えを了承したんじゃないか、なんて疑ってしまう。(※正解)





才川くんは私の顔を覗きこんだまま、繋いでいた手を彼のほうに引き寄せてその唇に押し当てた。指先が、湿った唇の感触を敏感に感じ取って心臓が痛くなる。

そのまま、才川くんは言う。



「する?」



こんな時間だけど、と眠そうな顔が柔らかく笑った。

もっと心臓が痛くなる。



優しく甘いお誘いはとっても魅力的だと思ったけど、そこは長年、焦らされることに堪えてきたこの体。これくらいの我慢はなんてことないのです。



「……しません。それよりちゃんと眠って」

「なんで、つれないな」



そう言って胸に顔を埋めてこようとする彼を、布団の中で強引に抱きしめた。



「……みつき?」



自分の顔の真横にきた才川くんの顔が、不思議そうにこちらを窺おうとする。けれどそれを許さず抱きしめたまま、彼の大きな背中を、子どもを寝かしつける時のようにぽんぽんと叩いた。



「……これ、何?」

「お母さんになったときの練習です」

「……」



言うと才川くんは黙った。こんなので大人しく寝てくれるかな……と思っていたら、急に強い力で抱きしめ返される。



「っ、苦しっ……」

「……さっきのちょっとキた。抱きたい」

「寝てよもう……!」





そうして貴重な二人の夜は更けていきました。




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